フィールドデータによる統計モデリングとAIC

統計数理研究所によるシリーズ本(ISMシリーズ:進化する統計数理)の第二巻である「フィールドデータによる統計モデリングAIC」を読んだ。

フィールドデータによる統計モデリングとAIC (ISMシリーズ:進化する統計数理)

フィールドデータによる統計モデリングとAIC (ISMシリーズ:進化する統計数理)

「進化する統計数理」を掲げているように、本書では古典的な仮説検定型の統計学ではなく、70年代に提唱され今では非常に多くの分野で利用されているAICが、いかに有用な規準でありその実は何を意味するかを、計算機の発展によっていっそう強力になってきている現状を踏まえ、統計モデリングを実際のフィールドデータに適用させながら説明している。

1〜3章で簡単な統計モデルでAICの利用の仕方と、その有用性を示す。
4章ではAICの、パラメータ数を足す、という結果に至るまでの過程を数式のみではなく、どのような思考のもとでどのような変形がなされているかを非常に分かりやすく説明している。
5章からは実データに対し研究レベルで統計モデルを構築した中からそれぞれ変わった例をトピックとして書いたという感じである。(なので説明不足感はやや感じる。)

実データに対し、どのような思想からどのように統計モデルを構築したかを堅苦しくなく書いており、これからモデルに基づくデータ解析を行いたいという入門者にうってつけの本ではないか思う。
これまで、実験系からバイオインフォマティクスに入ってくる人にどのような本を薦めるべきか分からず有名どころで後述のPRMLを押していたが、今後はその一歩手前として本書を押すことにする。


なお、本書ではパラメータフィッティングに関してはおおよそ計算機上で最適化したという記述のみにとどまることが多かった。
また、何らかのデータに対しモデルを構築したい人にはモデルの種類やテクニック等の情報が不足しているだろう。
上記二点に関してさらなる追求をしたい人には、下記のPRMLをとりあえずお薦めする。

パターン認識と機械学習 上

パターン認識と機械学習 上

パターン認識と機械学習 下 (ベイズ理論による統計的予測)

パターン認識と機械学習 下 (ベイズ理論による統計的予測)